PPC-LOG

主にリスティング広告をはじめとするWeb広告、マーケティング関連の記事を書いています。

人を動かす天才・鈴木敏夫に学ぶ

鈴木敏夫氏についてはご存知の方も多いかと思いますが、改めてどういった人物なのか、wikipediaから引用したものを貼っておきますので、ご存知でない方はご参照ください。

鈴木 敏夫(すずき としお、1948年8月19日 – )は、日本の映画プロデューサー、編集者。株式会社スタジオジブリ代表取締役、公益財団法人徳間記念アニメーション文化財団副理事長。株式会社徳間書店取締役、株式会社徳間書店スタジオジブリ・カンパニープレジデント、株式会社徳間書店スタジオジブリ事業本部本部長、東京大学大学院情報学環特任教授、株式会社スタジオジブリ代表取締役社長などを歴任した。

 

「鈴木敏夫」wikipediaより引用

 

言ってしまえば、全く売れなかった宮崎作品を売れるようにアレンジし、世に打ち出した稀代の天才仕掛け人です。以前にも話した通り、現在運用型広告の世界では、アドテクが劇的な効果が得られない割には複雑化しています。そこで必要となるのが...企画を仕掛ける技術です。(詳細は過去のブログを参照ください)

www.ppc-log.com

 

ジブリ作品の歴代のヒット作は、大抵は氏がプロデュースを手がけています。自分は特に、社会人2年目から3年目にかけて、まさに魚そのものではなく、魚の効率的な捕り方を教えてもらうように、仕事、生き方を氏に教わったような気がします。主には氏のラジオ、書籍を通じて。週に1度の「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」を聴く時間が、一時期は最高のひと時でした。

 

www.tfm.co.jp

f:id:sbgx:20191230184034j:plain

 

私と鈴木敏夫

また私自身、過去出版された鈴木敏夫の著作にはほぼ全て目を通しています。過去のラジオ放送も、可能な限りアーカイブ含め聞いています。

 

f:id:sbgx:20191230180420j:plain

 

ご本人名義で著書も何冊か出版されています。今回は鈴木敏夫関連の著作の中でも、異色の1冊をご紹介します。ちなみにこの1冊は、新卒の子が僕の手元にきたら、なるべく読むように促す1冊です 。なぜなら、安易な自己啓発書ではなく、純粋に鈴木敏夫が仕事にどのように対処してきたのかが、鈴木敏夫直下の部下であった石井氏によってまとめられている良書だからです。

 

f:id:sbgx:20191230182123j:plain

自分を捨てる仕事術-鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド』について

自分を捨てる仕事術-鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド』は、鈴木敏夫のアシスタント的役割を長年務めた石井朋彦氏の著作です。氏は、「となりの山田くん」以降ジブリに携わり、その後、Production I.Gへと移り、現在は株式会社クラフター取締役を勤められています。

 

 

 

大学を卒業後にジブリに入社し、まずは制作進行に携わりますが、紆余曲折をへて、鈴木敏夫の直下の配属となります。その後、鈴木敏夫に言われたことをメモし、保管するようにしていたところ、メモがダンボール5、6箱ほどまで溜まってしまい、「これは本にできるな」と考え至り、出版された書籍が本書になります。

 

以下はその書籍の出版記念イベントの際の音声データです。「書籍を読むのは面倒」「気にはなるけど...」という方は必聴です。

 

kurashicom.jp

 

 

【参照】プロデューサーとは決闘する生き物である──スタジオジブリ 鈴木敏夫×クラフター 石井朋彦×クラシコム 青木耕平 鼎談【前編】

【参照】「うまくいっていること」を見せると人は育つ──スタジオジブリ 鈴木敏夫×クラフター 石井朋彦×クラシコム 青木耕平 鼎談【後編】

【参照】2016/12/26 「スタジオジブリの仕事術」鈴木敏夫×石井朋彦 初の師弟対談の模様(前編)をお送りします。

【参照】2016/12/26 「スタジオジブリの仕事術」鈴木敏夫×石井朋彦 初の師弟対談の模様(後編)をお送りします。

 

本書には、鈴木敏夫に教えられた鈴木敏夫流の仕事術について、紹介がされています。簡単に7つだけ、要点をご紹介します。

 

鈴木敏夫流の仕事術7つのポイント

1.同世代、同期との飲み会は無意味

本書をはじめて読んだのは、社会人2年目の頃だったと思いますが、以来僕は社の同世代、同期での飲み会に行ったことは1度も行っていません

 ただ逆に、僕は社会人2年目〜3年目にかけて、社外取締役の方と1年間、サシで計4回会食の機会を設けさせていただきました。そしてその時の学び得たものが、今も手堅い学びとなり、マーケターとしての血肉となっています。完全にこれは本書の影響です。

また後輩とも数は多くありませんが、特に直属の配下の人とはご飯を食べに行ったりする機会に定期的に設けるようにしました。同世代、とくに同期とは飲みに行っても全く生産性がなく、確かに飲み会など、何かを話した気にはなるのですが、その飲み会がきっかけで大きなブレイクスルーが起きたことは僕自身、僕自身の身の回りでも、把握している限り一度もありません。逆に同世代以外のメンバーとの会食では、意外と発見や気づきを与えられたり、自分の意見が発言権のある方を経由して、全社に共有されたりするなど、結果大きな実りのある時間となったものも数少なくありません。

 

例えば鈴木氏は年上、年下と定期的にコミュニケーションすることを常に心がけており、今の時代に人が何をどう求めているのかを常に考えています。(例:千と千尋でコンビニをフル活用、米津玄師をラジオに引っ張り3回連続で出演させるなど)しかしながら、実は同世代の付き合いが浅いのです。よく話をする宮崎駿ですら、実は彼とは10歳以上も年が離れています。「同世代で集まって話していても何も価値はない、時間の無駄」というのは、まさにその通りだと今でも思っています。

 

2.席についてから、仕事に関する考え事を始めない

鈴木敏夫は本書の中で、石井氏に「仕事に関する考え事は、椅子に座ってから始めるな」と再三にわたり指摘しています。これ自体僕も実際に心がけていることなのですが、机に座ってからは基本的に考えていたことを吐き出すことに集中するようにしています。僕は普段、広告代理店で運用型広告の仕事に従事しています。例えばタスク管理1つとしても、仕事を行なっていく手順、順序立てなどは席に着くまでに、自身のメモや、メモツールなどを使って歩きながら、あるいは移動中に行うことが一般的です。移動中に仕事について思考し、考え進める人と比べて、席に座ってから考え始めて仕事に手をつける人は、仕事が遅くなる傾向があるように見ていて思います。

 

また他にも、広告案のアイディアなどは即メモし、移動中にスマホから部下に指示を出すことも決して珍しくありません。席についてから仕事を始める癖を身につけてしまうと、アイディアなどの場合だと忘却リスクもあります。ただのフラッシュアイディアも、もしかすると数十万、数百万の売り上げに繋がるかもしれません、機会損失はなるべく無くす必要性もあるため、「席についてから、仕事に関する考え事を始めない」は本書を読んで以降、特に心がけています。

 

3.オンとオフを分けない

本書の中でも軽く触れる程度記載ありますが、オンとオフ、つまり仕事と私事をわけないことを推奨しています。メリハリをつけたいという人も多いかと思いますが、オンとオフを切り替える際に発生する心理的負担などは常に軽視されがちです。

 

僕は休みの日でも、ある程度(例えば1日あたり1時間程度など)は仕事に時間を割くようにしています。幸い通常業務とは異なり、何を「仕事」としオフを過ごすかは個人の自由なので、なるべくガッツリ仕事感がすることをするのではなく、比較的作業自体が軽めのものや、仕事に直結しない諸作業(例えばこのブログ執筆、Twitterも仕事と言えば仕事です)を行うように心がけています。

 

僕自身、オンオフの切り替えを行いながら仕事をしていた時期もありましたが、切り替えに1週間かかってしまい、お正月明けや、GW明けが辛いといったことが多々あり、以降は切り替えないように仕事をするよう心がけています。

4.仕事は周りの人をうまく使う

自分で言い始めると、自分で責任を取らなければならなくなってしまい、心理的負担が非常に高まります。そのため、言い出しっぺにならないように注意をすることが大事です。

 

「○○だと思うので、○○をしましょう」ではなく、「○○さんが○○と言っていました、僕は○○さんの意見はとてもいいと思います。みなさんいかがでしょうか」と人の発言や、考えを引用するような話し方を心がけるよう、本書において石井氏に鈴木敏夫は助言しています。他の人がどう思うかではなく、自分で一から全て意見を出しておきながら、その物事がうまくいかない、失敗してしまうと、自分自身のプレッシャーや、心理的負担は非常に重くのしかかってきます。自分自身で対応可能なリスクであってもどんどんヘッジし、様々な提案を積極的にしていく事の重要性を指摘しています。自分もこの本を読んで以来、その点心がけるように振舞っています。人は一般的に承認される、発言を肯定的に引用され、マイナスには感じません。人の発言や言動には、どんどん乗っかっていきましょう。

5.自分を捨てる

1〜4は比較的実践できていますが、5はなかなか僕自身できていません。「自分自身を捨てて仕事ができる」というのは、かなり難しいと思います。

 

これについては誤解されやすい内容なので、簡単に本書の中に具体例の記載があるので、そちらを貼って説明させていただきます。

 

「おれも宮さんもさ 、昔から 、他人のために仕事してきたんだよ 。最初に 『アニメージュ 』をつくったときも 、発売 1カ月前に 、突然やれと言われてつくった。宮さんも、監督になんてなりたくなかった 。一生アニメ ーターで終わっていいと思ってたんだ 。でも 、高畑さんの下でずっとアニメーターをやっているうちに 、いつのまにか監督になっちゃった 。宮さんもおれも 、自分からいまの仕事につこうと思ったわけじゃない 」ぼくにとって 、この言葉はとても大きなものでした 。鈴木さんも宮崎さんも 、自分のためにではなく 、まわりのために 、そして最終的には 、作品を見てくれるお客さんのために映画と向き合っている 。それに対してぼくは 、 「自分のやりたい企画 」 「自分がいいと思うアイデア 」に固執していた 。いつのまにか 「責任感 」と 「自己肯定 」をはき違え 、自分のことばかり考えて仕事をしていたことに気づきました 。そこでぼくは 、自分発の企画ではなく 、自分のことを必要としてくれている人からもたらされた企画を片っ端から受けることにしました 。結果は劇的でした 。

 

『自分を捨てる仕事術: 鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド』第1章より引用

 

特に本書の中では、まず議事録をとるところから、自分を捨てる訓練がはじまるといった具体的な事例の記載があります。実際管理職になると、少し異なった自分の捨て方を求められるようになると思いますが、まずは新卒社員や新人であれば、議事録を積極的にとるところから、はじめてみると良いかもしれません。ちなみに星野リゾートの社長、星野さんの場合、最終的な意思決定を従業員に問うといったかなり異色の意思決定スタイルをとられています。

 

 

 

共通して、やはり自分を過信しすぎず、他人を信じる事が出来ないと...出来ないことではありますが、それらを行うことで成果を劇的に良化できることもあうという事を知っておくというのは非常に大切な事だと思います。

6.整理整頓

特に第3章「余白を作る」に記載あります。

 

鈴木さんは 、整理整頓や 、ラクをすることが本当にうまい。宮崎さんも 、だれよりも働いているように振る舞いながら 、昼寝をしたり 、雑談をしたり 、頭を整理する時間をちゃんとつくっています 。 

 

週のはじめに 、その週にやるべき仕事を考える時間をつくること 。週の真ん中で 、煩雑になった思考をいったん整理すること 。

 

いい仕事をしている人ほど 、 「暇です 」 「まだまだ余裕があります 」と言いますが 、それは自分の仕事の総量を把握し 、きちんと空き時間をつくっているからこそ言えるのだと思います 。忙しいというのは 、仕事の量の問題ではなく 、精神的にキャパシティ ーオ ーバ ーになってしまっている状態を指す

 

小さな仕事を片づければ片づけるほど、パニックになっていた頭のなかが軽くなるのを感じます 。脳に余白が生まれるのです 。 

 

自分を捨てる仕事術-鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド』石井朋彦 より引用

 

整理整頓できず、仕事に埋もれていく人は思いの外多いです。自分の場合はまず物理的に整理整頓しています。例えば...

 

  • 会社のデスクには基本的に物を置かない
  • 手荷物を極力減らす
  • 仕事道具は最小限
  • スケジュールの過密具合は部下にも事前共有しておく、代わりに整理してもらう(今はあまりお願いせず自分で行うことが多いのですが...)

 

自分自身は上記4つを自ら行っていたり、部下に依頼し実行してもらっていたりします。また上記4つに支障が出始めたら、それは忙しくなり、自分ルールが守れなくなりつつある状態にあるという、1つの判断基準とするようにしています。

 

7.面白がる

最後になりますが、これが結構大事な要素だと自分自身は考えています。テクノロジーや、新しいものはどんどん活用する方が良いと思います。

 

例えば鈴木氏は直近で、InstagramのLIVE機能を使い、実験的な講演会の生配信などを行なっています。

 

www.natsukirock.com

 

他にもLINELIVE配信にも意欲的で、このテクノロジーに興味関心を示す姿勢は、宮崎駿とは極めて対極的です。

 

live.line.me


またGoogleなどに対しても強い関心を持っており、実際に鈴木氏のラジオにGoogle Mapの開発者であるジョン・ハンケ氏を呼び対談をするほか、当時のGoogle Japan代表であった辻野晃一郎氏を招き、対談するなどを過去に行なっています。

 

【参照】2016/03/28 「人工知能と仮想現実 vol.1」
ゲスト:ジョン・ハンケさん、川上量生さん、川島優志さん

【参照】2016/05/30 「人工知能と仮想現実 vol.2」
ゲスト:ジョン・ハンケさん、川上量生さん、川島優志さん

【参照】2016/05/30 「人工知能と仮想現実 vol.2」
ゲスト:ジョン・ハンケさん、川上量生さん、川島優志さん

【参照】2010/01/17 Google社長・辻野晃一郎さんがれんが屋へ!
ゲスト:辻野晃一郎さん、藤巻直哉さん

【参照】2010/01/24 Google社長・辻野晃一郎さんがれんが屋へ!②
ゲスト:辻野晃一郎さん、川崎裕一さん、藤巻直哉さん、佐藤譲さん

 

自分は、鈴木敏夫は過去の歴史的文脈から、極めて正確な未来を予測する能力が特に卓越したプロデューサーだと考えています。例えばスタジオジブリはDVDの販売に対して意欲的ではありませんでした。これは、Blu-rayの登場を予見していた鈴木敏夫の判断によるものでした。ところが、Blu-rayが登場すると一気に過去の作品を一部大規模リメイクし、Blu-rayのラインナップシリーズを登場させました。レーザーディスク、VHS、ビデオ、DVDの歴史的な流れから鈴木敏夫氏は見張り、DVDの際は「まだだ」と判断したからです。このような高度な判断ができるプロデューサーは、極めて稀な存在ではないでしょうか。

 

今鈴木敏夫は、現代技術の最先端に触れて「どこからジブリ作品をサブスク配信すべきか」ということについて考えていると思います。おそらく2010年(上記)の際から悩んでいるので、10年近く悩んでいることになります。鈴木敏夫的には「まだ」なのでしょう。このような長期での施策投下の悩みを抱え込める器の大きさは常軌を逸しています。しかし、そのような常軌を逸した、勝負師さながらの姿からは学ぶことが多いです。

 

鈴木敏夫を気軽に知るには…

最後に、鈴木敏夫を気軽に知る事ができる方法について、簡単に記載しておければと思います。まず、毎週日曜日にTOKYO FMにて23:00から放送されている「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」が、もっとも鈴木敏夫を理解する上で、良いメディアだと思います。

 

また過去回は直近数年以内のものであれば、ほぼ全てPodcastで視聴可能です。一部古いものに関しましても、DVD化されているため、そちらも参考になるかと思います。またゲストのチョイスも大変良く(詳細前述)、決してアニメに偏った内容ではないため、アニメの知識がない方でも楽しめる内容となっています。しかしならが、ラジオでは常に一線をしいており、比較的冷静な鈴木敏夫をトークを聞く形になるかと思います。

www.tfm.co.jp

制作現場での鈴木敏夫を理解する上では、書籍、とくにメイキング映像が良いのではないかと思います。特におすすめなのが、『「もののけ姫」はこうして生まれた。』になります。本編約6時間弱のメイキング映像が収録されている。絵コンテから試写、動員の様子までが記録されています。

 

f:id:sbgx:20191230182050j:plain

スタジオジブリの広報担当部がどのようにキャンペーンをうち、配給会社、広告代理店にプレッシャーをかけるのかをリアルにみることができる、大変貴重な資料です。こちらは以前にもTwitterで触れていますので、そちらもご参考にしていただければ幸いです.

 

 

 

 

 

Twitterはこちら

twitter.com