PPC-LOG

主にリスティング広告をはじめとするインターネット広告、マーケティング関連の記事を書いています。

初心者相手に専門用語を使うマーケターの残念さについて

どんな仕事であったとしても、一度業界に身をおく経験があれば、その業界における専門用語(略語を含む)の多さや、表現の工夫に驚く経験をしたことが、1度はあるのではないかと思う。例えば飲食業を経験した人間であれば、「アニキ」「ヤマ」といった、顧客に伝わって欲しくない情報を隠語で伝えていたり、Webマーケティング業界では非常に多くの専門用語が略語化されていたりする。

 

対人コミュニケーションにおいて、双方間の、それらの専門用語に対する情報量が一定値以上の場合、専門用語を用いた情報伝達は、よりコミュニケーションを円滑にすることを実現させる。しかし、逆にどちらかの情報量が一定値以下の場合、コミュニケーションはうまくできず、齟齬が生じるケースも少なくない。

 

本日はクライアントなど、初心者相手に専門用語を用いるマーケターの「残念さ」にフォーカスし、話を進めていきたい。

 

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リテラシーの低い方に専門用語を使うメリットは、実は無い

自分自身、リテラシーの低い方に専門用語を使うメリットはそもそもないため、社外では使用する機会は殆どない。しかしながら、これまでも各現場などで、初心者相手に専門用語を使いながら説明を試みる人を、自分自身数多く見てきている。そもそもなぜ専門用語を使う必要性があるのか。その点について考えていきたい。

 

(1)専門用語を使うシーン、意味合いを理解していない

まず多くの場合においてだが、専門用語を使うシーン、意味合いを理解していない人が多すぎるように思う。例えば前述通り、双方間のある対象の言葉に対する情報量が一定の場合のみ、専門用語、略語を用いたコミュニケーションは成立する。

 

しかしながら、その点に対する配慮が抜けており、実際の現場では伝えたいことの25%も伝えられていないケースも、決して珍しくない。

 

(2)特に略語を使用する人は、はたから見ていると残念な人

特にリテラシーの低い方を相手に話をする際、略語を多用するマーケターは、はたから見ればただの残念な人である。なお相手が「?」という顔をしている場合、それに対して、その専門用語の意味を説明していたりする。そうであれば、初めから専門用語を使わない方法を選択した方が時短でもあるし、お互いコミュニケーションコストは低いように思う。

 

以前にもブログに書いた通り、我々広告代理店の人間は、マーケターとしては広告を用いたコミュニケーションのプロであり、相手が求めている情報を、もっともスムーズに、かつ最適な形で提示できなければならない。「広告」を挟んだ上でそれができて当たり前なのに、直接の対人コミュニケーションにおいて、それが出来ないというのでは、正直お話にならない。

 

(3)本質を見落としており、会話していても情報量が欠けていることが手に取るようにわかる

例えば、コトラーの唱える「ベネフィット」という言葉を、コトラーは長年説明できていない。「ベネフィット」という言葉は、日本語にすると「便益」という言葉になるのだが、本質的にそれが何を示すものなのか、私自身辞書を引いてみてもよくわからないし、よく理解できない。だから私自身は「ベネフィット」という言葉を用いることは殆ど無いし、コトラーの近年の著作は、ほぼ読んでいない。日本では近年コトラーの著作はあまり読まれていないように思うが、背景にはそういった点も関与しているのではないかと思う。また、我々の仕事と密接な関係にある、「マーケティング」という言葉も同様である。「マーケティング」という言葉はAMAやJMAによって定義されているが、それらは時代とともに移り変わっており、数十年周期で変更されている。それらの定義上の意味合いを汲み取りつつ、今の時流と重ね合わせて、自分なりに言語化できるマーケターは、市場全体の1%もいないように思う。

 

そして、これらの言葉を意味合いや、内容を理解せずに使用する際、実は相手には意外と理解していないことは伝わっていたりする。表面的な情報の伝達は内実を伴わないため、言葉に一切重みがなく、違和感が残るためである。

 

このように一見略語、専門用語を用いることはスタイリッシュであり、クレバーな印象を相手に与えるほか、円滑なコミュニケーションの実現に寄与しているように見えるかもしれないが、それらは実は時として間違っている事が多く、実際には略語、専門用語を用いたコミュニケーションは、メリットよりもデメリットの方が多いのである。

 

特に略語から入ると、本質を見失う危険性も

特に私がもっとも警戒すべきだと考えているのが、初心者、新卒2年目など、経験が薄い層が専門用語を過去の文献などを参照せず、略語から形だけ入ってしまう点である。

 

(1)略語から入ると、略前を言えない

例えばこれは極端な例だが「CPA」、「CV」、「CTR」といったデジタルマーケティング用語を知っていても、これらが略語であり、略前がどのような言葉なのかを知らないケースが、意外と多い。これらの言葉について、クライアントから説明を求められた際に答えられない人が意外と多く、これにより信用不安なども発生するケースは当然起こりうる。ちなみに、念の為述べておくと、下記の通りである。

 

CPA=Cost Per Acquisition(1件の成果獲得にかかる費用)

CV=Conversion(転換、転換数)

CTR=Click Through Rate(クリック率)

 

(2)略前を言えない=本質を理解していない

略語について、より本質的な点に関して、踏み込んでいきたい。

 

例えば「PR」「CM」といった言葉はそもそも略語であるということはご存知であろうか。業界内であっても、「PR=Promotion」といった間違った解釈がまかり通っているケースが多々あり、そのような解釈が入ってしまうと、本質を全く理解せず略語を使用するケース、人に拍車がかかってしまう。

 

「PR」の略前は、「Public Relations」であり、つまるところ「大衆との関係性構築」になる。一般大衆に対して情報を伝播するほか、情報や意見を受け入れることを示す。日本においては「広告」「プロモーション」と混合させられることが多いが、それは本質を捉えきれていない人が多いためである。(そのため「広報」の重要性に気づかない企業は多い)

 

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ちなみにCMに関して言えば、「CM=Commercial」ではなく、「CM=Commercial Message」である。「Message」があるのとないのとでは、CMが何なのかという本質を理解する上で、明確な差が生じる。ただ一方的に宣伝しているのではなく、「メッセージ」として情報を携え、宣伝しているのである。

 

(3)本質を理解していない=質問、疑問に答えられない、探求していない、問いを立てられない

物事の成り立ちに疑問を持ち、問いを立てられる人の方が、マーケターとしては優秀なケースは多い。逆に言えば、質問や疑問に答えられない、常に探求していないだけでマーケターとしては半人前なケースも多いのである。問いを解く能力は教育によって体得できるが、問いを立てる能力は、自己研鑽や習慣改善によってのみにしか体得できない能力である。まずは疑問に思うことがあれば調べる。略語や専門用語の意味を、定期的に調べるようにする、慢心・プライドを捨てるといった考え方が必要なように思う。

 


神経質になり過ぎないように

(1)神経質に扱う必要性はない

ただし気にしすぎて、過敏になってしまっても良くない。しかし、自分が所持している特定の「言葉」の持つ情報量は、常にコミュニケーションの相手も同じ条件という訳ではない。その点を忘れずに、TPOに応じた用語の選定、コミュニケーションの展開が大抵の場合、必要となることを忘れないで頂きたい。 

(2)どんどん社内、社外でのプロ同士の会話で専門用語は使えば良い

前述した通り、略語を使う最大のメリットはコミュニケーションコストの削減であり、私自身はシーンに応じて使う事、使われることに抵抗感はない。特に略語はその典型例だろう。

(3)言語の面白さと奥深さ

意外な言葉が意外な意味を持つことはよくあること。古語と新語で比べるもよし、略前と略後で比べるも良し。専門用語が使われるようになった経緯なども、調べてみると面白かったりするので、興味がある言葉は深掘りし、あれこれ疑問を持つと、日々の運用においても、新たな視点をもち、人と話せるようになると思う。 

最後に

本記事で伝えたいことは、初心者相手に専門性の高い略語は使わない方が良いという一点に尽きる。特に初心者の場合、略語を使わないようにする、略語を見かけたら略前を調べる癖を身につけるだけで、既存の概念を理解する際に多くの人がスキップしてしまう基礎知識を習得することができ、何かと得である。

 

特に新卒、2年目冒頭は「専門用語を多用するのがプロ」という、間違ったスパイラルに陥り、中には略語の略前を知らずに使う、自称・プロ、残念人を生み出してしまうケースも珍しく無い。特に新人のうちは、専門用語、略語の便利さに頼りがちだが、その点しっかりと個々の用語の意味合いを把握した上で使えるようになるだけで、他の同期、運用者とは比べ物にならないぐらい、言葉に説得力をのせることが、初期段階からできるようになる。この能力は、運用型広告を運用する上で、大きな力となる。

 

また、特に客席では積極的に、専門用語の略語、専門用語の使用は避け、わかりやすく情報が伝わるように配慮した方が、結果的に時短・相手の情報解釈力の負担低下にも繋がることも多い。専門用語を使ったコミュニケーションは、話し手は楽だが聞き手は理解できず、話し手がもっとも伝えたいことは、結果伝わらないことも珍しくない。専門用語を使わずに、専門用語のもつ意味合いをわかりやすく伝えなければならないシーンは、話し手にとっては楽ではないが、聞き手は言葉の意味を理解でき、学習が促される。