ここ数日、落合陽一@ochyai にハマっている。
彼の存在はテレビに出始めた頃から認知していたが、ここにきて、数冊kindleで著書を読み、少しだけ影響を受けはじめている(ほんの少しだけ)。
そんな彼が、以前、とても興味深い理論を展開していた。
彼曰く、
「人間が解くために理論を使っていた時代」から、
「解かれたものの理論を人間が解釈し、楽しむ時代」に、
時代が移行としているという。
彼の理論を整理すると、ざっとこんな感じ。
1.これまでは人間が問いを解くために理論を習得し、解こうとしていた
2.今は解けたものを、なぜ解けたかと分析する時代、分析の工程で理論を使う
3.間違いなく世界は魔術化していく、人間の理論を超えたところで情報処理がなされ、それがシンギュラリティにつながる
彼曰く、
AlphaGoの打ち手を見ていて納得できないことが多いが、実際に棋譜で読み返すと「ここでこの手....天才だ!」となることも多々あるのは、そのためだという。人間の理解をはるかに超えた思考性(ここでの例では俯瞰力、判断力、実行力、学習力)があり、ディープラーニングや機械学習により、今後解かれていく解は、我々が過去に想定した解以上に最適解となる可能性があるとも....。
非常に興味深い。
本日はこれをテーマに、直近3年ほどで自分が体感している、広告運用で最初に成果を出すまでのフローの変化している件について、解説していく。
- 広告運用で最初に成果を出すまでのフローが変化
- 初期構築において、差が出にくくなっている
- 一方増えている、「勉強」の時間について
- 細部で動きが変わったもの
- では、どのように運用価値を見出していけばいいのか
- 最後に
実際に、自分も仕事で広告運用に5年ほど携わらせていただいている中で、特にGoogleの広告運用をしている折、感じることが多々ある。
最初に成果運用で出すまでのフローの内訳(時間)が、ここ3年ぐらいで劇的に変わっている。
広告運用で最初に成果を出すまでのフローが変化
結論から言えば、かつてに比べて短時間で仮説を立て、初動で多数の打ち手を展開し、自動最適化を促しつつ、成果が出たらそれについて分析を展開し、自動最適化をより促す(手動による配信量への影響が大きい調整は行わない)改良を行うアカウントが伸びる。
仮説を立てる時間、単純に入札調整する業務が無くなり、
クリエイティブの作成や、打ち手の掌握にかける勉強時間が増えている気がする。
ざっくりと、下記にて図解。
過去のフローの内訳(時間)
今のフローの内訳(時間)
仮説出しについては、正直経験によるものも大きいかもしれない。ある程度の運用歴が、仮説出しを短時間化させるのに作用していると考えられる。
施策の準備・実施については、アナグラムをはじめ各代理店が成功事例や、新規メニューの実装情報などをブログで紹介してくれるので、それを見て「とりあえずやってみよう」となる場合も多い。あとはTwitterで最新トレンドは回ってくるので、それらに目を通し、「とりあえず動こう」というケースも多い。結果、仮説出しの時間は減っている。
初期構築において、差が出にくくなっている
またアカウントを初めから詳細に作り込んでも、近年では差が出にくくなっている。(例えば、1広告グループ1キーワードは、むしろコンバージョン数の増加、最適化を実施していく上では現在弊害になることも多い)これはとくにGoogleで言えることで、機械学習の改良によって起こっていると考えてもらって差し支えない。
僕の現在のアカウント構築については、直近で佐賀の広告代理店の方がブログに書かれていた構造にすごく似ているので、ぜひそちらを参照してほしい。
一方、勉強の時間が増えている。
一方増えている、「勉強」の時間について
ここでの勉強とは、クライアントの商材理解、機会学習や、勉強会・セミナー・カンファレンスへの参加、顧客への直接取材などだが、それらによって得た知見を活かし、広告運用した方が、正直アカウントの成果最大化に与える影響が大きい。(そのため、今はアンケートの解析業務や、顧客への直接ヒアリングなどの機会が増えてきている)
あとは、Youtubeを用いた情報拡散の手法、SNSやGoogle Mapを用いた情報発信の仕方を、クライアントに教えられるレベルまで学ぶよう、常に情報収集するようににしている。(これは運用業務外ではあるのだが、僕自身がコンサル業務に興味があるというのと、ネット炎上した際に、広告運用に影響が出る可能性が非常に高く、予防と、善管注意義務があると考え、実行している)
他にも細部で、動きが大きく変わったものがある。
細部で動きが変わったもの
1.キーワードの拡張(挙動)
かつてでは考えられなかったが、ノーマルの部分一致もガンガン追加している。
かつでであれば考えられなかったが、今ではコンバージョンも取れ、こちらが想定していないキーワードでのコンバージョン獲得機会も増えている。
Google、Yahoo問わず、それぞれ学習は間違いなく優秀になってきている。
ある大手代理店はリスティング広告でKWを登録する際のルールをガチガチに固めているらしい。
— メンデス (@UZ90509997) July 25, 2019
1語=完全一致
2語=フレーズ一致
3語=絞り込み部分一致
参考までに
キーワードの登録方法や、アカウント構築を画一化することで、代理店の組織としての運用力は一定になるだろうが、自分はそれによって生じる機会損失の方が大きいと考えている。(工程・管理を効率化できるため、高確率で広告代理店が得をして、クライアントが損をしている)
2.アカウントの作り方も変わってきた
かつては今自分がやってきた構築は、基本は1広告グループ1キーワード構成。
基本はそれで一貫し、広告運用していた。
現在では、
1広告グループ1キーワードで最初は作成するが、チューニング後に最適化させ、 一定期間後にキーワード選定&キーワードの追加を実施し、必ずしも1広告グループ1キーワードで回している訳ではない。(もちろん、熟慮した上で、あえて1広告グループ1キーワードで回しているケースもある)
詳細なクリック単価調整よりも、目標コンバージョン単価制の方が成果が良いケースも非常に多く、場合によってはクリック数の最大化、コンバージョン数の最大化を導入するが、基本は目標コンバージョン単価制で回し、最適化を進めることも増えている。(もちろん全て自動最適化に任せる訳ではなく、-100%などといった極端な調整は、現在でも手動で行なっている)
3.その他変化
入札調整は基本的に行わず、クリエイティブの調整、情報の収集に時間を割き、よりダイナミックな変更によって成果の良化を狙う姿勢が出来つつあると思っている。
直近で小西さん@isseikが下記のようなツイートをされていました。
そういう意味では自分も結構ハイブリッドなキャンペーン構成でイメージしてるな。キャンペーン名に番号とか優先度とか予めつけるのは昔からやらなかったしやったら運用しづらいと思ってたけど、最近はさらにそうなっていってるな。というかもうキャンペーンと広告グループという構成が変わってほしい
— 小西一星(品質スコアが低すぎますが表示されています) (@isseik) July 23, 2019
自分も多分そんな感じになっていくのかな...と思ってます。
5年以内ぐらいに、Adwords Expressや、スマートアシストキャンペーン的な形で、今ぐらいの精度のアカウントが作れる時代が来るのではないかと考えています。ある程度自動化が進むのではないかと思っています。
では、どのように運用価値を見出していけばいいのか
このような形で技術革新が進んでいけば、
しだいに次のような恐怖感や、ワクワク感が芽生えてくるのではないかと思います。
「では、どうやって代理店としての価値を提供していくのか」
この部分についてですが、
新規施策の導入やトレンドに沿った運用はもとより、
それ以外にも上記したような、「勉強」にリソースを割き、
管理画面ベースの運用にとらわれない運用をおこなう代理店、
運用者が伸びてくるのではないかと考えています。
最後に
前述した落合氏ですが、「朝まで生テレビ!」にて、
とても面白い議論を交わしています。
これは、
「テクノロジーをいかに受け入れていくか、そっぽを向くか」
という議論に通じる点があると思います。
テクノロジーに対する恐怖・拒絶は、歴史を見ていても絶えることを知りません。
それは例えば、イギリスで産業革命時の機会打ちこわし然り、
近年のAI・ディープラーニングに対する漠然とした恐怖然り、
「母をたずねて三千里」のマルコがやっていたビン磨きしかり、
戦前の日本における氷売り然り、
テクノロジーの導入により、消えた職業や、転化を余儀なくされた職業は、歴史的に見ても多くあります。
テクノロジーを拒絶するのは自由ですが、拒絶した結果、時代についていけず、過去に埋もれてしまった人が、歴史上には存在します。
今一度考え直し、「最適な形」を個々の運用者が考えるタイミングがきているのではないかと思います。