PPC-LOG

主にリスティング広告をはじめとするインターネット広告、マーケティング関連の記事を書いています。

広告運用者が習得すべきコミュニケーションスキルについて

広告代理店において、新人の時には王道的なマーケティング理論よりも、コミュニケーションスキルの方が役立つことが多い。
 
特に対クライアント用のコミュニケーションスキルは、早期タイミングでの習得をオススメする。コミュニケーションスキルを早期段階で習得することができるメリットは大きい。業務でもっとも圧縮が困難かつ、難易度の高いのが、クライアントワークであることは間違いない。そのクライアントワークを短縮、効率化することができるようになるということは、結果的に、より多くの運用業務時間の確保、勉強・学習時間の確保、外部セミナーへ参加する余裕を生むことに繋がり、結果運用者としての実力上昇に大きく寄与する。
そのため、対クライアント用のコミュニケーションスキルは、早期タイミングでの習得した方が効率が良い。
 
 
まず、王道的なマーケティング理論とは、どのようなものがあるだろうか。例えるならば、ドラッカー、コトラー、などの著書はそれらの典型例であろう。
 
日本人で言えば石井淳蔵、神田昌典なども挙げられるだろうか。
これらの知識は確かに、根本的な部分において業務との関連性が高い、しかしながら、正直後回しに勉強しても良いのだ。それらの知識は多くの場合、管理職になる際、スタートアップビジネスを手がける際、結局1から学び直すことが多く、知識活かせるシーンも、広告代理店の新人の時は殆どと言っていいほど無いためである。
 
短期的なCPA至上主義は批判されるけど、経営者やマーケターのスキルやセンス、思想以上に、健全なユニットエコノミクスになっていないとCPAやCACを絞らざるを得ないし、キャッシュがなければ、短期的にCPA、CACが合うところで勝負せざるを得ない。
— 栗原 康太 | BtoBマーケティング支援 (@kotakurihara) August 24, 2019
 
また、いくら体系的な知識を持ち合わせていたとしても、実務においては様々な制約があり、制約下で最高のパフォーマンスを出していくことが、特に日本の非上場企業、中小企業では求められるケースが多い。
 
月次、週次問わず、直近の数値で物事を白黒図りたがる人は多く、それらは大抵の場合、統計的にも、常識的に考えても、当然正しくない。
 
しかしながら、実務においてはやはり目先の成果を良化させつつ長期繁栄させて行くことが要求される。また、クライアントと方針で決裂してしまうと、顧客満足度の低下や、代理店の乗り換え(つまりは解約)を招いてしまうケースも、決して珍しいことではない。むしろ、決裁権を有しているのはクライアント側なので、それは当然のことであろう。
 
しかしながら、時にはクライアントに無茶を飲んでもらい、泣いて貰ってでも話を通さねばならない時がある。時にはクライアントが振りかざしてしまった不本意な拳を、うまく収めてもらうために、収めどころを用意し、嵐が過ぎ去るの一歩も譲らず、待たなければならない時がある。
 
 
このように、クライアントに対して、"コミュニケーション"、"交渉"をすることで事態を前に進めていかなければならないことは実務ベースでは数多くあり、私はそのような仕事も、広告運用者の仕事の一部だと考えている。
  
広告運用実務に関する知識、数値を分析する能力、これらは日頃の業務の中で体得できる人も多いだろう。しかしながら、実際の人間、特にクライアントを目の前にすると、配慮した行動、振る舞いをすることができず、間違ったコミュニケーション、交渉を試みてしまう人は、意外にも多いように思う。
 
またコミュニケーションスキルは、意図しなければ、習得が難しいスキルである。上司から「今日はコミュニケーションスキルを教えよう」と言われる機会は殆ど無いはずだ。なので自ら意識し、盗みに飛びつかねば、決して学ぶことはできない。
 
本日は、広告運用者は、マーケティング理論より先にクライアントとの交渉時に必要な、コミュニケーションスキルを体得した方が良いという話を進めていきたい。
 

f:id:sbgx:20190901130142j:plain

まず、適切なコミュニケーションスキルを身につけなかった場合、運用者の身に降り注ぐ危険性について、実例を交えて考えていきたい。
 

広告運用者の辛かったこと、嫌だったこと事例

上記noteは、実際にクライアントワークに心を病んでしまい、代理店を退職してしまった方のものである。今回はこちらをモデルケースに、如何にコミュニケーションスキルを用いることができれば、退社するほどのストレスを回避することができたのかについて、考えてゆきたい。 
 

その方は自社でGoogleアナリティクスの数値を確認可能で、自社サイトに訪れたユーザーや年齢層によって毎日分析されていました。

 

分析した結果をふまえて、成果が悪くなってきた時にメールなど「私はこう思うのですが、どう思いますか?」とメールが連投されてます。

 

退職直前の4ヶ月平均で1ヶ月あたり104通のメールをいただきました。つまり稼働日が大体22日だとすると1日5件は分析依頼のメールをもらっています。

 

これはかなりしんどいのです。

 

前職のリスティング広告代理店で運用担当者していて辛かったこと、嫌だったこと(リアルな話)」より引用

 

結果「しんどい」状態に陥ってしまい、実際このnoteの書き手は、心労が重なり退職に至っている。しかし、より最適なコミュニケーションが、日頃から取れていれば、自分は十分、退職を回避することはできたように思う。

 
では私であれば、どのようにクライアントに対してコミュニケーションを試み、事態を収拾させるかについて、一考してみたので、そちらを述べてゆきたい。
 

もし私の案件だったらどのように対処し、交渉したか

実際、今回のケースに遭遇した場合、私であれば次のように対処し、自体を収拾させようと図ったと思う。

 

(1)まずはイシューの確認を実施する

 まずはイシューの確認を実施し、「なぜ頻繁にメールを送ってくるのか」といった点について、調査を実施する。 


仮説としては、下記の通りである。 


・パフォーマンスが心配でメール

・上司から催促され、嫌々ながらメール

・暇だからメール(構って欲しい、話し相手になって欲しい)

・嫌がらせ、報復(可能性は低いが、一応仮説としてあげておく) 

 

(2)これまでの振る舞いを振り返り

 次に過去のこちらの振る舞いを振り返り、対応、メールのやりとりに問題がなかったかについて、確認を行う。できれば複数人で確認をとる形をオススメする。もし顧客アンケートなどがあれば、それらを活用するのも、1つの手である。

 

(3)データで示し、メールの返信が困難なことを率直にお伝えする

 お打ち合わせの席で、率直に「メールを減らして欲しい」旨を伝えてみると、良いかもしれない。もちろん契約時に、いついかなる時もメールは担当者が即レスするなどと明文化している場合、この交渉方法は困難を極める。しかし、大抵そんなことはないはずだ。もし先方が難色を示す、あるいは自覚がないようであれば、過去1月あたりメール100件のデータを示し、Excelなどで如何に業務を圧迫するほどメールを送ってきているかについて、率直にクライアントに提示してみるのも手であろう。

 

また、それでも難色を示すようであれば、「1日1回、まとめて返信する形でも良いか?」といった確認を取るのも手ではないだろうか。メールやチャット、電話によって気軽に繋がれるようになったメリットもあれば、デメリットも確実に存在している。どのように交渉し、物事を進めていくかは、運用者次第である。

 

(4)成果の良し悪しの基準を明文化、統計的な成果の幅について説明、理解を得る

 前述した通り、クライアントは目先の数値に気がとられがちであり、統計的に見た際にコンバージョンの減り方が統計的には誤差の範囲であったとしても、「誤差」として処理できず、「悪化」と断定し、相談してきている可能性が高い。当然、悪化しているのであれば、分析、改良案の提案などが必要となるが、実は悪化していないケースも多い。過去半年間で見た際には大きく落ち込んでいるわけではなかったり、繁忙期、閑散期による影響や、直近であれば増税関連の影響を受けている可能性も非常に高い。 


統計的に誤差の範囲であるのであれば、その点についてクライアントに説明し、理解を得る必要性があるケースも多い。また過去に説明したとしても忘れられているケース、何度説明しても理解が得られず当然時間がかかるケースは多い、その点は「広告運用はサービス業」と割り切り、機械的に対応することをオススメする。 いちいち感情的になっていては、こちらも疲弊してしまう。

 

(5)人間アピールにより、人間関係を詰める

これまで記載してきたのは、あくまで「治療」的なコミュニケーションであったが、ここからは日頃の振る舞いや、コミュニケーションの取り方についての改良提案である。 


私がオススメするのは「人間アピール」である。 
例えば....

 

・(長期休暇明けの際)どこに旅行に行ったかといった話

・最近見た映画の話

・最近読んだ本の話

・家族の話 


特に新規のクライアントとのお打ち合わせの際には、必ずアイスブレイクの時間、機会を設け、本題に入らないように心がけている。

 

また、日本国内で震度5以上の地震が発生した場合、必ず即震源地域について調べ、クライアントがいる場合は昼夜構わずメールを一本入れるようにしている。そのような心がけができるか出来ないかによって、クライアント側も運用者に対する意識がだいぶ変わるはずである。

 

(6)商材理解を深め、よりグッと人間関係を詰める

やり方は複数あるが、例えば、

 

・クライアント主催のパーティーや勉強会に参加する
・商材を実際に購入し、使って一次情報を収集し、成果改良のための提案に盛り込む
 
などといったことを行うことで、人間関係をグッと詰めることが可能である。
 
 
 
 
このように(1)〜(6)と筋立てして説明してきたが、実際にはその場で微調整したりしながらコミュニケーションを深めていく。実際私自身、案件を引き継いだ際にクライアントとの関係性が最悪に近い状態(解約寸前)のものも過去あったが、半年かけて安定、良化させ、大幅増額や身の上話をできる関係性に繋げた案件も存在する。
 
正直これらの行為を「泥臭い」と捉える運用者も多いのではないかと思う。しかし、その一時の「泥臭い」行為の末に、良好なクライアントとの関係性を構築できるケースは多い。
 

私がコミュニケーションスキルを如何に学んだのか

まず前述した通り、コミュニケーションスキルは非常に伝授が大変困難なスキルである。受け手が相当真剣でなければ、座学ベースでも、実践ベースでも、なかなか習得は困難な技術であるように思う。
 
 
また実践を重ね、場数で習得できると考えている人もいるかもしれないが、毎月数回しかない打ち合わせの機会を重ねるだけでは、習得に何年かかるか分からない。それは、あまり実践的では無い。
 
自分の場合、主にラジオを通じて学んできた。例えばスタジオジブリの鈴木敏夫など、実際に数々の大規模プロジェクトに携わってきた経験のある人から、実践レベルで通じる、コミュニケーションスキルを学ぶように心がけた。
 
鈴木敏夫は過去の交渉実例(例えば、ジブリ映画作品公開時に、広告代理店の担当者に対して、どのようにプレッシャーをかけるのか、ジブリスタジオの不動産取得の際、どのように不動産会社と交渉したのかなど)を包み隠さず、ラジオで語っている。そのようなオープンな情報を活用しない手はない。
 
実際にコミュニケーションスキルを習得したい方は、一度狂ったように、長年続いているパーソナリティーのラジオを聞き続けてみると良いかもしれない。自分は本で学習し理解するよりも、コミュニケーションスキルは耳で鍛えた方が良いように思う。
 
【参考】
ジブリ汗まみれ(鈴木敏夫)
ジブリ汗まみれ」については、過去放送がPodcastで視聴が可能である。
 特に鈴木敏夫の付き人であった石井朋彦著『自分を捨てる仕事術: 鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド』発売記念の師弟対談回は、必聴である。
 

最後に 

最後に、再度前述したnoteについて触れておきたい。

 

下記は具体的な業務内容です。

(1)インターネット広告の出稿(広告文差し替えや画像作成も含む)
(2)掲載結果分析を踏まえた改善
(3)月次報告書の作成(月初に毎月報告があります)

 

前職のリスティング広告代理店で運用担当者していて辛かったこと、嫌だったこと(リアルな話)」より引用

  

言葉尻を捕らえるようで大変恐縮だが、例えば「(2)掲載結果分析を踏まえた改善」と記載しているが、私はなるべく、客席では「改善」という言葉は使わないし、資料にも記載しないように試みている。なぜなら、「改善」と言う言葉だと、もともと悪いもの(なぜ自分で運用中のものを、自らプロ目線で「悪い」と言ってしまうのだろうか)を、大きく善くしていこうという意思表示に見えてしまうからである。
 
私であれば同様のシーンであれば、「改善」ではなく「改良」、「修正のご提案」などと伝える。要するに、「現状十分良いものだが、より良くしていきたい」という意思表示を前面に押し出しつつ、提案させて頂くスタイル(相手の意思決定権を尊重しながら、議論を進める)で切り込んでいくだろう。
 
また私のクライアントの場合、自社、あるいは外部の信頼をおいている制作会社にサイト制作を依頼しているケースも多く、そのため自分の方からサイト改良案を提出する場合、「サイトを改善していきましょう」と言ってしまうと、ちょっと上から目線で見られていると感じてしまうクライアントも、少なからずいるのではないかと思う。 
 
このように、他者への想像力をもつことがコミュニケーションスキルを引き上げる上で、必須のスキルとなる。
 
一人で仕事を全て回すのであれば問題ないが、どこまで行っても、一人でできる仕事は結局限られてしまう。 特に代理店に所属し、広告運用業務を一人で回しているというケースは数少ないように思う。(例えばコンサルとして独立し、一人で仕事を回している人はいるものの、その領域まで行っている人のコミュニーケーションスキルは、大抵の場合は卓越している)
 
「広告コミュニケーション」と呼ばれるぐらい、「広告」と「コミュニケーション」は、密接な関係で成立している仕事である。見ず知らずの見込み客に商品についてのコミュニケーションを試み、コンバージョンをとれるか、とれないかが、広告運用業務における肝である。
 
しかしその前にまず、月に1回、週に1回程度会話をしたり、メールをする相手を説得したり、納得させられないのは、論理的に考えてみればおかしな話である。
 
この投稿が、非効率なクライアントワークや、クライアントとのコミュニケーションに悩まされている広告運用者にとっての救いとなれば幸いである。
 
非効率なクライアントからの依頼業務、ルーチン作業の発生を解消し、時間を設けることを、少しだけ意識してもらえただけでも幸いである。
 
時間がなければ我々の業務の本分である「広告運用」は出来ないのだから。その点について、もし現状に納得していないのであれば、まずはしっかりとクライアントと向き合い、話し合うことから逃げてはいけないと意識を改めて欲しい。